遅延造影MRIとは

MRI

遅延造影 MRI とは、心筋梗塞や心筋線維化を評価するシークエンスであり、心臓MRIの中で最も重要な技術のひとつです。ガドリニウム造影剤は細胞外液腔に分布する造影剤であり、心筋梗塞や心筋線維化において、正常な心筋よりも高信号域として描出されます。ガドリニウム造影剤投与後10分後程度で撮影をします。遅延造影の大きなメリットとして高い空間分解能が挙げられます。空間分解能はおおよそ2 mm 程度と言われており、10ミリ程度である心臓核医学検査と比べて微細な変化を評価できます。しかし一方、あくまで細胞外液腔の拡大を評価しているだけなので、細胞内の代謝や炎症などの機能的な評価はできません。

心臓 MRI の撮影方法には、主にinvertion recovery(IR)法が用いられています。IR法は180度パルスをかけてプロトンを反転させ、正常心筋の信号値がゼロになったタイミングで撮影を行います。このような方法により正常心筋は黒く描出され、異常な心筋は高信号になります。正常心筋が黒くなる(信号がゼロになる)タイミングをnull pointと言いますが、この設定が遅延造影を正確に評価する上で非常に重要な点になります。IR法では撮影する技師が画像を見ながらマニュアル操作でnull pointの設定を行いますので、この設定を誤りますと評価が困難な画像になってしまいます。特に難しいのが心アミロイドーシスになります。心アミロイドーシスは心筋がびまん性に障害されるため、正常心筋そのものがないことがあり、異常な心筋にnull pointを設定してしまうことがあります。このような場合には Phase sensitive invertion recovery(PSIR) 法が有用なことがあります。PSIR法は、null pointの設定を撮影機器によって自動的に設定することができます。心アミロイドーシスなどの慢性の心筋障害を呈する疾患では、試してみるのも良いかもしれません。

IR法における正常心筋と梗塞心筋の信号変化
高速心筋はガドリニウム造影剤によってT 1緩和時間が短縮しているため、正常心筋よりも早期に信号がゼロになります。信号がゼロになるタイミングの差を利用して画像コントラストを出すのが遅延造影 MRI です。遅延造影 MRI では正常心筋の信号がゼロになるタイミング(②)で撮影を行います(null point)。①や③のタイミングでは梗塞心筋を過大評価ないしは過小評価する不正確な画像となります。

心筋梗塞の重症度評価

心筋梗塞では重症度が進行するにつれて、梗塞病変が内膜側から外膜側に進展するという現象があります(wave front現象)。遅延造影 MRI では重症度の評価に壁内深達度(Transmural extent)を用います。壁内深達度は心筋の厚みにおける梗塞心筋の厚みの割合で表します(下図)。壁内深達度が大きくなれば大きくなるほど、血行再建後の局所壁運動の改善の割合は減少し、壁内深達度50%が心筋バイアビリティの有無の閾値として用いられます。詳細は心筋バイアビリティの項を参照してください。

・遅延造影MRIは梗塞や線維化の評価に用いられるシークエンスであり、最も正確な梗塞心筋の評価が可能とされている。

・壊死した心筋では細胞外分画が増加し、そこに造影剤が分布することで高信号(白くそまる)となる。

・心筋バイアビリティの評価や心筋症の鑑別に用いられる。

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